introduction

イントロダクション

我が国の製造業をサポートし、
グローバル化を支える
一翼として。

深刻な被害から立ち直ろうとする日本企業と現地の人々。
その希望となるべく、陰ながら奮闘する三井住友海上の社員たち。
損害保険が果たす社会的意義と役割とは何か…。
一人ひとりの社員が立ち止まらずに向き合い、挑戦し続けた物語を紹介します。

田中 正人

1993年入社 総合営業第二部 第二課
※現在:名古屋企業営業第一部 トヨタ室長

Profile

マリン(海上保険)の営業を経験した後、日本の大手企業のリスクマネジメントを担当する総合営業部に異動。当時、大手電機メーカーを担当する第二部に所属。全域社員8名、地域社員5名、全13名のチームで国内大手エレクトロニクスメーカーをお客さまに「損害保険グローバルプログラム」に関するコンサルティング営業を推進。

日本での企業営業。
舞台は世界。

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「まずいかもしれない」。10月17日、田中のもとにタイ支店から1通のメールが入った。田中の担当する企業の工場が浸水しているというのである。今や日本の大手製造業は、国内外の各地で製品を生産し、世界市場で販売している。自ずと国や地域により、いろいろなリスクに遭遇することになる。例えば、政治不安によるデモや暴動、ハッカーによる攻撃、そして、タイの洪水のような自然災害もリスクの対象だ。グローバルに活動する企業は、あらゆるリスクを十分に想定して対策を講じる。そこで、三井住友海上のような損害保険会社がネットワークを張りめぐらし、リスクマネジメントのプロの立場から様々なサービスを提供する。損害保険によるプロテクションはその一環だが、法制や商習慣、カントリーリスクなど、国や地域ごとに専門的な知識のもとに企業活動を支えている。

田中が担当している大手エレクトロニクスメーカーは、特に先進的な損害保険の取り組みを推し進めている。日本の本社が損害保険に対する基本方針を策定し、世界共通のプログラムとして、全世界の現地法人や関連企業に徹底して展開する「損害保険グローバルプログラム」と呼ばれるスキームだ。田中の所属する総合営業第二部第二課は、その大手エレクトロニクスメーカーの「損害保険グローバルプログラム」を企画・運営するサポーター的役割を担っている。自社のグローバルネットワークをフルに活用して情報を提供しながら、リスクマネジメントのプロとして提案やアドバイスを行い、最適なグローバルプログラムの構築を支援している。

誰も経験したことが
ない水害。
異例づくめの出張。

02

「水害と言えば、日本人の感覚だと、大雨や台風が来て、数時間、数日で過ぎるものという感覚があります。また、タイで洪水は毎年起きること。しかし、今回はまったく違いました。じわじわと水が押し寄せた。2ヵ月も泥水に浸かったまま工場が稼働できないなど誰も予測できません。私だけでなく、当社でも損害保険業界内でも、誰も経験したことがない災害でした」。

田中が語るように、工場が2メートルを超える泥水に数ヵ月も浸かるリスクなど、過去に例がない。彼が担当する大手エレクトロニクスメーカーも2つの工業団地にある工場が浸水した。しかし、水が引かない限り損害調査ができない。調査ができなければ保険金支払い業務も進められない。「当初は何かしたくても動けない状況でした。それでも、お客さまのパートナーとして、復旧について一緒に考え、当社のタイ洪水対策室が入手した情報をお知らせしたり、保険金請求手続きについてご案内するなど、できる限りのことを行いました」。

11月中旬、工場が水に浸かっている段階で、田中はお客さまの担当者と現場へ飛んだ。予防接種を何本も打ち、服装は帰りには処分できるよう古着を用意するなど、異例づくめの出張だった。

バンコクの空港は特に変わった様子はなかった。しかし、車で走るうちに景色が変わり、途中から道が川のようになっていく。現地へはボートで行くしかない。

「用意されていたボートは、『これで行くの?』というほど小さい。当時は、水に落ちたら粘膜から菌が回るから絶対に落ちるなと言われていました。『落ちたら即入院か』と思いながら救命胴衣を付けて小さなボートに乗りました。工場に近づくと、湖の中に建物が浮かんでいるような不思議な景色が広がっていました。あの景色は、一生の記憶に残ると思います」。

その後、田中はタイに計5回足を運ぶ。水が引き、ガラスは割れ、電気の復旧していない暗い工場の中で、泥まみれの床や機械などの損害状況を見に行き、損害査定に関するロスアジャスター※との会議に参加。お客さまの復旧に貢献するために、一つひとつできる限りのことを進めていった。

※ロスアジャスター:専門知識を駆使し被害物の損害額を算定するスペシャリスト

損害保険の
社会的意義と役割とは?

03

実は、田中のように営業担当者が早くからお客さまとともに現地入りし、復旧を早くからサポートした動きは、日本の各損害保険会社を含めても、殆どなかった。「タイの洪水による損害と保険金による補償は、お客さまの決算や株価にも関係しますし、日本を代表するような大手企業ですから、経済や産業に与える影響も非常に大きい。いろいろな意味でお客さまにとって、損害保険金の補償は重要な経営マターでした。だからこそ、お客さまのリスクをサポートする損害保険会社として、営業担当者の私たちが先頭に立ってこれ以上にないほど対応し、顧客満足度の高いサービスを提供することで頼れるパートナーだと認めていただけるのだ思っています。おこがましいようですが、お客さまに私たちの対応に満足いただけたという自負があります。今回の水害では多くの日本企業が被害を受けました。私だけでなく、各営業担当者が、いろいろな企業の、いろいろな場面で努力をしていたはずです」。

「今回の事案で、お客さまとの距離が一段と近くなりました。単なる取引先という関係ではなく、グローバルな企業展開を成功に導くためのリスクヘッジ手法を、お客さまと同じ船に乗って考え、実行している一体感があります。

大局的な観点では、多数の日系企業が損害を受けた分、産業界で損害保険の力が見直されたと自負しています。当社として支払額は大きいものでしたが、陰ながら、わが国の製造業をサポートし、グローバル化を支える一翼になれた。損害保険は目には見えにくいけれど、確かな使命を担っているのだと誇りに思っています」。