Project Story タイの大洪水に見る損害保険の確かな意義

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STORY 01

企業の復興に必要な資金需要に一日も早く応える。
洪水対策室チームの強い想い。

上田誠 1996年入社 タイ支店 
※現在:損害サポート本部 海損部

PROFILE

入社以来、マリン(海上保険)の損害サポート業務を中心にキャリアを積む。2008年4月から2011年3月までシンガポールのアジア持株会社に駐在し、2011年4月にタイ支店へ異動。本来の担当は、タイ支店が元受契約しているマリン/ノンマリン、及び三井住友海上本社が元受契約しているマリン(タイ向け輸出貨物)に関する損害サポートの統括業務。

01 願い届かず、南下していく洪水。

『何か起こったら速やかに動く』、それが上田のスタイルだ。もともと上田は、マリン(タイ向け輸出貨物)に関する損害サポートを行う責任者としてタイ支店に配属された。ところが配属後、タイの洪水が起こり、中心メンバーとして奔走することとなる。
10月4日、『バンコク郊外北部サハラタナナコン工業団地が浸水』との一報が入った。上田はすぐに洪水対策室を立ち上げた。これまでの経験から、大きな災害になりそうだと直感したからである。

「この時点では洪水対策室といってもメンバーは私と、たまたま10月から海外研修に来ていた若手の二人だけ。工場も2mを超える泥水に浸かっているため、損害調査もできません。状況を見守る中、まずは、ご契約頂いている企業に関する工場の建物の規模や構造、中で使われている機械の明細など、保険金支払いの対象になる契約内容を整理する作業から始めました」。

しかし、日を追うにつれて被害が拡大していく。洪水はじわじわと南下しながら、工業団地を飲み込んでいった。
「対策室にテレビを持ち込んで情報を収集しながら、次のエリアで止まるだろうと。しかし止まらない。でも次のエリアで止まるだろう(いや、止まってくれ)。しかし止まらない・・・これはまずいかもしれないぞと、様々な資料と照らし合わせて保険金支払額の数字を予測したのですが、私の経験したことのない数字でした。私だけでなく、恐らく誰も見たことのない数字だったはずです」。

02 総勢70名のグローバルチーム。

お客さまの多くは、工業エリアからバンコク市内のホテルに避難していた。そのバンコクも最悪1.5mくらい浸水する恐れが出てきた。バンコク東部のシラチャに洪水対策のバックアップオフィスをセットアップしているが、バンコク市内の浸水の程度や可能性、この異常事態における効率的な業務の継続性等を検討した結果、10月28日には幹部スタッフも全員、オフィス近くのホテルに泊り込んで待機。バンコク市内の水かさが増せばボートで、場合によっては胸まで水に浸かってでも出社し、タイ支店として事業を継続する責任を果たそうと覚悟を決めた。幸い10月末をピークに水が引き始め、結果的にバンコクは浸水せずに済んだ。そして、ようやく洪水対策室が本格的に動き出した。ここからが上田たちの正念場であった。

ここで、国際標準の保険金支払いの業務を簡単に紹介する。【1】お客さまに損害届けを提出いただく。【2】ロスアジャスターと呼ばれる専門の鑑定士が客観的に損害額を査定。【3】企業と保険会社とロスアジャスターの間で協議を行い、金額を確定させて保険金を支払う、というフローである。
今回、被害を受けた三井住友海上のお客さまは200社以上にのぼる。これはタイの工業地帯で被害を受けた日系企業の約半分を占めていた。三井住友海上のアジアにおけるシェアの高さはもちろん、同社が日本企業のグローバルなモノづくりを支えていることが窺える数字だ。

「機械のアイテムだけでも数万点にのぼる企業が多く、その一点一点について、さらに建物や逸失利益など、対象となるすべての損害調査を何社分も並行して進めていかなければなりませんでした。それはもう膨大な、気の遠くなるような業務量です。日本はもちろん、米・英・独・中・印・韓など世界各国から、最も多い時で約70名、2011年10月から1年間の延べ数では500名ほどが出張支援に駆けつけてくれました。世界のさまざまな部門や人と連携しながら、洪水対策室という最前線の現場の組織編成や運営体制を統括する重責を担うしかありません。特に12月末までの2ヵ月は必死でしたね」。
上田は、世界から応援に来てくれている以上、いち早くお客さまの期待に応えたい、という気持ちだったと語る。

03 損害保険の社会的意義と役割とは?

2011年11月中旬から12月にかけて、各工業団地の排水がようやく完了。現地で調査が行えるようになる。とはいえ、工場がどのくらいで復旧できるのか、建物や機械、製品がどの程度の損害を受けたのかなど、見えないことばかりであった。保険金支払い額の確定まで長期間を要すると見込まれる一方、操業停止が長引くなかで、多くのお客さまが資金繰りの問題に直面する。加えて12月決算の企業も多く、保険金の支払額は経営にも影響を及ぼす可能性があるのだ。

「私たちの段階で可能な手立ては、スピード感をもって保険金の内払いを進め、お客さまの資金需要にできる限りでお応えすることだと判断、12月末までに数百件、数百億円規模の内払いを実行しました。1ヵ月程度しか時間がない中、対策室のメンバー全員が一致団結して頑張った成果であり、保険金をお支払いするという当社の業務としては当たり前のことではありますが、どこよりもスピーディな対応を実現できたことで、損害保険会社としての社会的意義を果たせたのではないかと感じています」。

※内払い:総損害額の確定前に、その段階で確定している損害額を先行してお支払いすること。

「災害は、起こらない方がいいに決まっていますが、いつ起きるかわかりません。その時、真価を発揮するのが損害保険です。実際に、今回のタイの洪水では、『損害保険に入っていて助かった』と、多くの企業のみなさまに喜んでいただけました。損害サポート部門に身を置く者として、これ以上の喜びはないと私は実感しています。同時に、50年に一度と言われる災害を目の当たりすることは、恐らく二度とない貴重な体験でしょう。今回の対策室の活動経緯や現場で気づいた課題を整理し、今後、同様のケースが他の国で発生した際には、より効率的、効果的に対応ができるよう、前向きに取り組んでいるところです。また、グローバルに事業を展開する上での当社の課題も見えました。働く場が国内だろうと海外だろうと、これから迎える人も我々も、常にグローバルな意識をもって、価値を発揮することが求められます。日本も海外の1つという意識で損害保険の価値を提供していくことに、更に力強く取り組んで行きたいですね」。